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■御影瑛路「空ろの箱と零のマリア 7」/電撃文庫



シリーズ最終巻。最後の課題、星野一輝を浄化するのが残っているので、それを扱っている。

ループする世界を延々と繰り返す中、死にたがるようになる。不老不死のラスボス系キャラが死を望むネタはよくあるが、これまではいまいち共感出来ないものがあった。が、こういう行程が描かれるとなんだか納得できるものがあった。閉塞、怠惰に麻痺させられるとどうでもいいので変化を求めそう。死であっても。

世界から自分以外の人間をすべて消そうとする流れも、試行錯誤っぷりがシミュレーションSF的に面白かった。罰当たり過ぎるし、主人公がやることじゃないってのもまた凄い。

エピローグにも十分な分量を取ってメインキャラそれぞれを浄化させていて過不足無い締め方だった。「何も死ぬわけじゃあない」ってのは、ベタな台詞なのにこれまでの事件を経てからだと刺さるものもある。自分ももしツイッターのフォロワーを本部以蔵扱いして、名誉毀損で告訴されて前科持ちになって貯蓄たっぷりむしり取られたとしても、「何も死ぬわけじゃない」ぐらいの気持ちでその後の人生を過ごそうと思う。

■赤川次郎「悪魔のような女」/角川文庫



「暴力教室」「召使」「野菊の如き君なりき」「悪魔のような女」、以上4編収録。

「暴力教室」だけはピンと来なかったが、他3編はどれも中編サイズで十分に面白い内容だった。特に「召使」は召使いの存在がどう着地するのか最後まで分からず、読んでる途中で妄想横道突入してボリューム以上に感じた。この「召使」は導入からして星新一っぽい不可思議さもあって良い。

「野菊の如き君なりき」「悪魔のような女」、この2編は女の強かさと諦観する男という意味で共通するものがある。が、そこはどうでも良くて、読んでてただ面白い、それで十分だった。終盤できっちりひっくり返って読者へのサプライズがあるのが良い。

■御影瑛路「空ろの箱と零のマリア 6」/電撃文庫



星野一輝ごときで勝ちようがない醍哉をどう打ち負かすのかという流れ。醍哉、というかこの作者の書くキャラは性格がもうブレないぐらい固まっているので、崩すのも一苦労だと思う。特に今回はタイムリミットがある中での勝負となり、短時間で相手の気持ちを折る為のあれやこれやをぶつけ合う内容になってて、面白かった。

サイレントメビウスだったかな、「魔には魔を」みたいなフレーズが出てきたのって。それに近い何かを感じた。冷徹には冷徹を。夜神月に夜神月をぶつけるような突破法で、これまで主人公として描かれていた星野のこれからがとても気になる。残り1巻で救済されるんだろうか。ベタに倫理的に救済されないかも知れないし、どうなるのか作者の舵が楽しみ。

シリーズ初期では見えなかったレギュラー面々を闇方向に掘り下げるのも良いな。ぼんやりした取り巻きに終わらせず、どいつもこいつも符を抱え込んでいてそこに踏み込んでいる。素晴らしい。

■赤川次郎「恋愛届を忘れずに」/角川文庫



「私への招待状」「恋愛届を忘れずに」「町が眠る日」「私からの不等記号」、以上4編収録。

作者、自己投影していない作風なんだな、と思った。あれだ、今日日のなろう系とか自身の現状への鬱憤晴らしみたいな物が多い。使えない扱いされていたけど別パーティで活躍して元のグループに再評価されたり、現実でドロップアウトしたニートや窓際が架空の世界で社会への恨みつらみを叩きのめす系の作品が多い。それがない。何か赤川次郎はニュートラルな作風に感じる。

例えば若さへの判定が、ある作品では是になったりまた別の作品では非になる。若いゆえに強かったり、若いゆえに未熟だったり、一辺倒でない。なので、予断を許さない強さがある。「この作者はこういう性格だしこのキャラは悪役に裏返るな」と安直に判定させない先の読めなさがあって、実に良い。

4作品の中では「私への招待状」が好みかな。自分には結構意外な黒幕だったし、その後の人生のキツさも想像可能で宜しい。

■夢枕獏「キマイラ6 如来変」/角川文庫



菊地がどんどんパワーアップしてきて面白い。殺す気で、死んでもいい気でかかってくる何でもアリのヤツは強いな。この辺の強さ、バキの死刑囚にもあった。特にドイル。菊地はまだ社会に保護されている部分があるので、ガチで命のやり取りするような世界に飛び込んだらどうなるんだろ。流石に死ぬだろうから、通用するぐらいまでは典膳に守られていて欲しいな。典膳もそういう保護するようなキャラじゃないけど、そこは作者の采配で。

一方で龍王院弘がどんどん落ちていく。遂にはそこらの酔っ払いにすら負ける。犬を食っていた過去の自分に戻り、一からやり直す気持ちになっているので弘もこれからはようやくパワーアップするのか。夢枕獏作品でギラギラしたヤツに懐く犬はひどい目に会う。

大鳳がキマイラ化して元に戻れなくなっている模様。意識は保っているし人間の言葉も辛うじて絞り出せているが、半分獣のような姿の様子。脇キャラの動きが楽しいので主人公がイマイチ活躍していなくても読める作品。

■笹沢左保「木枯し紋次郎(十三)」/光文社文庫



「人斬りに紋日は暮れた」「明日も無宿の次男坊」「女郎にはたった一言」「生国は地獄にござんす」、以上4編収録。

これは微妙。紋次郎のキャラがブレている。「人斬りに紋日は暮れた」で約定を違えて見逃すのもおかしいし、その他の作品でも紋次郎が他人を詮索しまくっている印象。関わらないキャラだったのに自分から色々聞き出そうとしているってのに違和感。

キャラがブレているので本来全集的なものに収録しなかった作品を、今回は全て網羅すべく載せたのかなとか思ったが、「あっしには言い訳なんぞござんせんよ」という新しい口癖が出て来るし、過去作一覧から選別して外してたワケではなく、集中的に書いてた連作っぽい。うーむ、作者も紋次郎から離れててよく分からなくなった後期にキャラ人気だけでひねり出した数篇なのかも。

解説無し。ただし作者笹沢左保自身による紋次郎制作秘話な後書きがある。ここは収穫。シリーズ作品にする上で主人公キャラが欲しかったので紋次郎というのを作ったとかそういう話。が、よくまあこんな動かし難いキャラ設定にしたなあと感服する。

■鎌池和馬「とある魔術の禁書目録 SS」/電撃文庫



普段は一冊に一つは意識している柱/テーマが無い、というぐらいで13巻の続きとして成立している。読む前はてっきり完全な番外編でギャグ寄りの短編集なのかと思っていた。ていうかこれも読まずに13巻から14巻に移ったら戸惑いそうでもある。

学園都市とローマ正教との戦争を前にした、準備回という感じ。なのに、スキルアウトなる第三勢力が登場してカオス度が増している。良い。二項対立よりもこれぐらい混沌とするほうが先が読めなくて面白い。スキルアウトは能力者恨んでるポジションだけどローマ正教とも対立してくれそうで、三つ巴状態になるのが楽しみ。

一方通行がそんな凡人のスキルアウトの一人に追い詰められるのも宜しい。案外弱点多いな。チームワークが無ければどうにもならなかったってのも良い。スキルアウトは警戒に値すると読者に思わせた、良いバトルであった。

■松枝蔵人「瑠璃丸伝 1」/電撃文庫



風魔、伊賀、甲賀、根来、戸隠、陀毘泥(南蛮妖術)それぞれの頭領が東京で擬似家族として暮らし、来るべき至上の使命の時に備える、そんな話の様子。使命はラストで明かされる。どうやら魔王退治らしい。

忍者作品の傑作「甲賀忍法帖」での統合悲願が悲劇になる結末を吹き飛ばすような全勢力家族一員状態がまず面白い。上手いコト年齢も散ってて、おじいさん役や父親役が揃っていてキャラの振り分けも分かりやすく宜しい。母親役の紅音が三十路であるが、大学生の長男がいる家族設定としてここは微妙か。でも30代って言っても39まであるからな。

末娘役の風華が何かと「ころそう」と簡単に言ってたちが悪くて宜しい。

ヒロインの竜造寺翔子、中盤の印象が珍しい感じだった。瑠璃丸に対する態度がどうにもワルに惹かれる娘みたいなキャラに思えた。吉良吉影に惚れ込む川尻妻みたいなあのDQN嗜好な感じ。が、そんな印象も後半の試験パートで拭われ、どうやら健全なメンタルを見せてくれて一安心だったよ。

これ、電撃文庫第一弾の一つだったのか。いつから電撃文庫というレーベルが出たのか気になっていたが、この頃だったのか。巻末に収録されている広告、「クリスタニア」とか「極道くん」とか懐かしい。

■夢枕獏「魔獣狩り 淫楽編」/祥伝社



〈精神ダイバーとは人間の頭脳に潜入し、その秘密を探り出す特殊技能を持った戦士である……〉
超過激集団黒士軍から一億円を奪った文成仙吉は逃亡中の山中で闇の祝祭・乱交の儀式を目撃し、何者かに襲われ腕を食いちぎられた。一方、聖域高野山で空海のミイラが盗まれ、密教術の達人・美空と精神ダイバー・九門鳳介が直ちに事件の謎を追うが巨大な獣人・蟠虎の凄まじい攻撃にさらされる……。夜に蠢動する秘密教団“ぱんしがる”と日本の政治権力と暴力団を支配する黒御所の陰謀とは?

最初の書き下ろし長編になるはずだった、と作者が語っていて、夢枕獏の基本キャラが網羅されている感あり。主人公三人、いや群像劇なノリなので誰が主人公なのかわからないが、巨大な敵に立ち向かう側のメインキャラ3人がホント夢枕獏作品の主人公三種三様になっている。

サイコダイバーの久門鳳介。サイコダイバーシリーズと銘打たれているのでこの人が主役中の主役なのかな? 粗暴そうでいて、しかし繊細なサイコダイブの様子からして相当賢いパターン。夢枕獏主人公いるいる。

美空。容姿端麗で体術にも優れた天才僧侶。仏教方面のキャラで、夢枕主人公いるいる。

文成仙吉。格闘系。夢枕主人公いるいる。ただ本当にただの格闘方面に全振りしてて、サイコダイブとか密教の謎パワーとかそういう連中の中にいるには一般人過ぎる。出て来る作品間違っているよ。そういう意味で死相が漂っているんだが、そこはそれ。作者が気に入ってそうなキャラなのでしぶとく生き残ってくれそうでもある。

全25巻で完結済の作品。この1巻の段階ではまだとっ散らかってて、消化不良であるが、今後どんどん楽しくなっていくだろう。そういや後書きで「まだ進行中の物語前半を、ここにようやく上梓」と書いているんだが、まさか二冊で終わらせる気だったのか。またか。またそのパターンだったのか。

■一肇「フェノメノ 参」/星海社FICTIONS



前巻の続き。後半部分。篁亜矢名に関する話が一応の決着を見せる。見せるが、圧倒的な存在だったので、このまま終わるのかどうかも怪しい。エピローグで夜石、篁に完全敗北宣言をしているし。まあでもこの幕引きはホラーの常套の余韻を理路整然と語ってみただけで、再登場とかはしないのやも知れぬ。

ファフロツキーズ現象の答えは微妙ながらもこの作品ならではの解釈だったので良かった。謎空間も唐突で戸惑ったが、そこに居た篁の存在感も良いし比喩も楽しいし建物自体が装置になっていた大掛かりさも良い。

それとこのシリーズ、箴言にしたい台詞がボンボン出て来るんだが、何故か頭に残らない。目についた端からメモるとかしたほうがいいのかな。何か読んでて目が滑っちゃうんだよなあ。

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