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■夢枕獏「餓狼伝 10」/双葉文庫



丹波、姫川にボロボロに負ける。試合上はノーコンテストになっているが、脱糞までしたし心も完全に折れている。

まず梶原との再戦があり、恐怖を感じないのを知る。試合なので目潰しを警戒していない梶原、故に恐怖を抱かない。ここでまず丹波が立っている場所が既にステージ違いとなっている。

さらに控え室に乱入してきた文吾との闘い、こちらは何でもアリな状況で実際丹波は相手に金的を放っている。この戦いで負傷したが、ダメージを受けていたので姫川戦負けても読者は納得するでしょ的な乱入戦ではなく、むしろ逆で、丹波が完全に覚醒した描写。梶原戦で次のステージを匂わせつつもまだ疑念を抱いていた丹波、そのステージで遠慮なく戦える精神状況に突入。

そして、そんな現時点でこれ以上のパワーアップは無いトコロまで一気に登り詰めた丹波が姫川にボロクソに負けるというのは熱い。目潰しも使ったが相手はそれを理解した上で凌ぐ。こんなに強くていいのか姫川。像山、巽に次いでせいぜい三番手でしょ、作中での強さ。

丹波の再生に時間かかるのかなあ。他の強キャラ同士の戦いをその間描いて欲しい。

■入間人間「電波女と青春男 4」/電撃文庫



短編集。「家出基地」「初恋を見下ろして」「空への明日」「ぼくと彼女の月の距離」「E.R.O」の5編が収録。最後の「E.R.O」以外は主要キャラそれぞれの過去の話になる。

リューシさんの一人称で語られる「家出基地」がやたら読みにくかった。このノリが本編の文体なんだけど、久々に触れるとキツい。一巻を初めて読んだ時は案外受け入れられたんだがなあ。読書にスピードを求めている身には常時引っかかり噛み砕きながら読む必要がある文章は面倒であったよ。

「空への明日」はエリオ視点。エリオは基本謎キャラなので、その思考が見えるのは何だか凄い違和感も覚える。考えている内容は至ってまともであった。小学生にしては達観し過ぎだろーとは思うがそこはそれ。フィクションですし、「嘘つきみーくん~」の作者ですし。

エリオ以外は過去の恋・それに準じたものを扱っているのか。四十女の恋で一冊書いた癖に他の年頃の女性の恋は短編ってのが凄い。

■夢枕獏「陰陽師 鳳凰ノ巻」/文春文庫



「泰山府君祭」「青鬼の背に乗りたる男の譚」「月見草」「漢神道士」「手をひく人」「髑髏譚」「晴明、道満と覆物の中身を占うこと」、以上7編収録。

最初と最後の話が道満が出てきて楽しい。道満、割りと害を成すコトが多いんだが、何のためにそんな行為に出るかというと、暇潰し、退屈しのぎ、愉快犯なだけというキャラなのが憎い。レベルEのバカ王子みたいなもんだ。

以前はこういうキャラ設定があんま好みではなかった。何かもうちょい行動原理に思想を反映させて欲しいという気持ちがあって。でもまあ、ただかき乱して周囲がてんやわんやになっているのを愉しむというのも性格としては充分アリだよなあと思うようになった。

■綾辻行人「奇面館の殺人」/講談社ノベルス



奇面館主人・影山逸史に招かれた六人の男たち。館に伝わる奇妙な仮面で全員が“顔”を隠すなか、妖しくゆらめく〈もう一人の自分〉の影……。季節外れの吹雪で館が孤立したとき、〈奇面の間〉に転がった凄惨な死体は何を語る? 前代未聞の異様な状況下、名探偵・鹿谷門実が圧巻の推理を展開する!

オーソドックスな推理小説。初心回帰して挑んだと後書きにあるが、その通りな読後感。一応この作者らしい叙述トリックでのサプライズもあるが、それ以上に何か無難感を抱いた。旧来のミステリを読んでるあの感覚。逐一丁寧で、裏を返せば段取りが毎度毎度のコトで退屈でもあるあの感覚。

まー、こういう無難でこじんまりした内容のものを書けたのは素晴らしい。過去の自作に追い詰められて、どんどん書けなくなってフェードアウトする小説家も多いからね。特に高い評価受けた作品出してしまった人なんかは。新作書いて読者に発表する。それを維持するのはとても大変。

シリーズ9作目。作者は全10作を想定しているので、いよいよここまで来たかと感慨深いものもある。シリーズ通しての大きな仕掛けは無いとこれまた後書きで書いているが、中村青司の謎に迫る何かは是非欲しいトコロ。

■トーベ・ヤンソン「小さなトロールと大きな洪水」/講談社



全集は全8巻+別巻から構成されており、この作品は別巻に相当する。

プロトタイプにも思えるが、一応シリーズには組み込める。これまでのシリーズよりも先の話、谷に住む以前の内容になっている。

ムーミンママがムーミントロールが、パパを探して旅をする。道中出会いや別れがあり、直線的な旅ながらも起伏アリで何気に楽しい。訪問する場所/環境もメリハリがあって楽しい。

解説では「戦時中の不安が云々」とあり、作中では確かに常に不穏な何かが付きまとう旅であるが、そこはムーミン。謎の安心感がある。嵐が来ようが何が起ころうがどうにかなるだろうという安心感。

というワケでこのシリーズも終了。児童書は結構カオスだなと思ったな。いやムーミンシリーズが特殊なのかも知れない。どいつもこいつもマイペースだからな。

■浦賀和宏「浦賀和宏殺人事件」/講談社ノベルス



ミステリ作家浦賀和宏は悩んでいた。次作のテーマは「密室」。執筆が難航するなか、浦賀ファンの女子大生が全裸惨殺死体で発見される。彼女が最後に会っていたのは浦賀和宏!?そして……その裏にはもうひとつの事件が?

講談社ノベルス20周年記念企画で出版された密室本の一つ。130ページと薄め。

2002年当時のミステリ界隈の内輪ネタ的なものが数多く鏤められているのでその方面へのサービス要素も強く感じる。当時の自分だったらもうちょい色んな感情が沸き起こっていたかも知れないが、経年によって本格ミステリとかファン論とかどうでもいいと考えるようになった今なので、ナチュラルに回顧録な読み方が出来た。あー当時そうだったよなー的な。

「アマチュア時代に俺の本をさんざん批判したくせに、メフィスト賞とってデビューした途端に他人の本を批判しなくなった大変懸命な方もいらっしゃる」(69ページ)

この大変懸命な方、別名義でレビューしていたサイトを当時読んでいたので、某作家と同一人物と知った時は驚いた覚えがあるな。

■師走トオル「僕と彼女のゲーム戦争 2」/電撃文庫



FPSに長けている金髪ロリ巨乳登場。これで部員が四人揃った。

TPS/FPSについて「ロストプラネット2」「ホームフロント」「Halo Reach」を通して解説し、ストーリーに落とし込んできている。自分が不得手というか興味がわかないジャンルなので、こういう物語を通して理解出来るってのはありがたいワケであるが、それなのにやっぱ興味の無さでどこか流し読みしてしまったりもする。まあ指切りってのは覚えたので何かの機会に試してみよう。

権田原も早々に再登場、そして主人公、チーム戦でありながらも一応の雪辱は果たした。ラスト、図書館の女の子は気になるヒキであるが、どう絡めてくるのか予想付かないなあ。

■逢上央士「建築士・音無薫子の設計ノート」/宝島社文庫



「-----つべこべ言わず、アナタはこの部屋にしなさい」建築を学ぶ今西中が、風変わりな喫茶店で出会った小柄な女性。彼女こそが今西がこれからインターンとして働く建築事務所の代表、音無薫子だった。天才的な観察眼と奇抜な発想で依頼に応える彼女の元には、ちょっとワケありの依頼人ばかりが訪れて…。

日常系ミステリと思いながら読んで、実際そんなノリだった。ミステリ要素を事前に何で感じたんだろう。「謎(ワケ)あり物件、リノベーションします」という副題からかな。謎、という単語で。

ちょっとした情報からザクザクと真相を当てる、エキセントリックな言動、そんな音無薫子のキャラクターは今となっては懐かしい探偵造形で良い。昨今何となくこういうタイプの探偵減ってる感じするし。

全4編からなる連作短編集。謎とその解決は、建築に絡めて、依頼者本人すら気付いていないリノベーションを提案するコトで解決という形を取る。かと言って、従来のミステリでいうトコロの動機重視の話ではなく、今ある建築の状態が物証となる解法なので、依頼人の心を勝手に解釈している感は薄め。それでも強引っちゃあ強引だが。

■笹沢左保「木枯し紋次郎 (十)」/光文社文庫



「虚空の賭けた賽一つ」「旅立ちは三日後に」「桜が隠す嘘二つ」「二度と拝めぬ三日月」、以上4編収録。

「旅立ちは三日後に」は紋次郎が一定の地への永住を考える稀有な一編。内容はそんなに捻りのある話でもなかったが、あの紋次郎が永住を考えるという一点のみでイレギュラー過ぎてビビった。

「桜が隠す嘘二つ」は紋次郎がやたら饒舌になる稀有な一品。僅かな情報からガツガツ真相に食い込む紋次郎の探偵っぷりを久々に見た気がする。

「桜が隠す嘘二つ」「二度と拝めぬ三日月」の2編には国定忠治が登場。このシリーズで複数の話に登場するキャラは珍しい。他のエピソードでも昔紋次郎に会った人は出てくるが、読者的には初見の存在だからなあ。ていうか紋次郎、シリーズ始まってから作中時間で二年以上は放浪しているし、描かれてないだけでもあちこちに色々な関係残しているんだな。

■森博嗣「奥様はネットワーカ」/講談社ノベルス



複数の登場人物の主観による語りがザッピング形式で描かれるので、読みにくかった。渾名と本名二つあるってのも理由で序盤は人物把握に戸惑いまくり。舞台劇みたいだなーという気持ちで読んでいたらラストがそんなノリの幕引きであった。

以下ネタバレ。

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Author:七瀬
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(これは藤林杏の為の歌じゃない)
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(失った信頼の為に黙祷するやつはいない)
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(あの生き物はマス受けするTシャツ男になるつもりはない)
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(キョロ充のイエスマンが大声でそれを叫ぶ時)

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