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■トーベ・ヤンソン「小さなトロールと大きな洪水」/講談社



全集は全8巻+別巻から構成されており、この作品は別巻に相当する。

プロトタイプにも思えるが、一応シリーズには組み込める。これまでのシリーズよりも先の話、谷に住む以前の内容になっている。

ムーミンママがムーミントロールが、パパを探して旅をする。道中出会いや別れがあり、直線的な旅ながらも起伏アリで何気に楽しい。訪問する場所/環境もメリハリがあって楽しい。

解説では「戦時中の不安が云々」とあり、作中では確かに常に不穏な何かが付きまとう旅であるが、そこはムーミン。謎の安心感がある。嵐が来ようが何が起ころうがどうにかなるだろうという安心感。

というワケでこのシリーズも終了。児童書は結構カオスだなと思ったな。いやムーミンシリーズが特殊なのかも知れない。どいつもこいつもマイペースだからな。

■浦賀和宏「浦賀和宏殺人事件」/講談社ノベルス



ミステリ作家浦賀和宏は悩んでいた。次作のテーマは「密室」。執筆が難航するなか、浦賀ファンの女子大生が全裸惨殺死体で発見される。彼女が最後に会っていたのは浦賀和宏!?そして……その裏にはもうひとつの事件が?

講談社ノベルス20周年記念企画で出版された密室本の一つ。130ページと薄め。

2002年当時のミステリ界隈の内輪ネタ的なものが数多く鏤められているのでその方面へのサービス要素も強く感じる。当時の自分だったらもうちょい色んな感情が沸き起こっていたかも知れないが、経年によって本格ミステリとかファン論とかどうでもいいと考えるようになった今なので、ナチュラルに回顧録な読み方が出来た。あー当時そうだったよなー的な。

「アマチュア時代に俺の本をさんざん批判したくせに、メフィスト賞とってデビューした途端に他人の本を批判しなくなった大変懸命な方もいらっしゃる」(69ページ)

この大変懸命な方、別名義でレビューしていたサイトを当時読んでいたので、某作家と同一人物と知った時は驚いた覚えがあるな。

■師走トオル「僕と彼女のゲーム戦争 2」/電撃文庫



FPSに長けている金髪ロリ巨乳登場。これで部員が四人揃った。

TPS/FPSについて「ロストプラネット2」「ホームフロント」「Halo Reach」を通して解説し、ストーリーに落とし込んできている。自分が不得手というか興味がわかないジャンルなので、こういう物語を通して理解出来るってのはありがたいワケであるが、それなのにやっぱ興味の無さでどこか流し読みしてしまったりもする。まあ指切りってのは覚えたので何かの機会に試してみよう。

権田原も早々に再登場、そして主人公、チーム戦でありながらも一応の雪辱は果たした。ラスト、図書館の女の子は気になるヒキであるが、どう絡めてくるのか予想付かないなあ。

■逢上央士「建築士・音無薫子の設計ノート」/宝島社文庫



「-----つべこべ言わず、アナタはこの部屋にしなさい」建築を学ぶ今西中が、風変わりな喫茶店で出会った小柄な女性。彼女こそが今西がこれからインターンとして働く建築事務所の代表、音無薫子だった。天才的な観察眼と奇抜な発想で依頼に応える彼女の元には、ちょっとワケありの依頼人ばかりが訪れて…。

日常系ミステリと思いながら読んで、実際そんなノリだった。ミステリ要素を事前に何で感じたんだろう。「謎(ワケ)あり物件、リノベーションします」という副題からかな。謎、という単語で。

ちょっとした情報からザクザクと真相を当てる、エキセントリックな言動、そんな音無薫子のキャラクターは今となっては懐かしい探偵造形で良い。昨今何となくこういうタイプの探偵減ってる感じするし。

全4編からなる連作短編集。謎とその解決は、建築に絡めて、依頼者本人すら気付いていないリノベーションを提案するコトで解決という形を取る。かと言って、従来のミステリでいうトコロの動機重視の話ではなく、今ある建築の状態が物証となる解法なので、依頼人の心を勝手に解釈している感は薄め。それでも強引っちゃあ強引だが。

■笹沢左保「木枯し紋次郎 (十)」/光文社文庫



「虚空の賭けた賽一つ」「旅立ちは三日後に」「桜が隠す嘘二つ」「二度と拝めぬ三日月」、以上4編収録。

「旅立ちは三日後に」は紋次郎が一定の地への永住を考える稀有な一編。内容はそんなに捻りのある話でもなかったが、あの紋次郎が永住を考えるという一点のみでイレギュラー過ぎてビビった。

「桜が隠す嘘二つ」は紋次郎がやたら饒舌になる稀有な一品。僅かな情報からガツガツ真相に食い込む紋次郎の探偵っぷりを久々に見た気がする。

「桜が隠す嘘二つ」「二度と拝めぬ三日月」の2編には国定忠治が登場。このシリーズで複数の話に登場するキャラは珍しい。他のエピソードでも昔紋次郎に会った人は出てくるが、読者的には初見の存在だからなあ。ていうか紋次郎、シリーズ始まってから作中時間で二年以上は放浪しているし、描かれてないだけでもあちこちに色々な関係残しているんだな。

■森博嗣「奥様はネットワーカ」/講談社ノベルス



複数の登場人物の主観による語りがザッピング形式で描かれるので、読みにくかった。渾名と本名二つあるってのも理由で序盤は人物把握に戸惑いまくり。舞台劇みたいだなーという気持ちで読んでいたらラストがそんなノリの幕引きであった。

以下ネタバレ。

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■師走トオル「僕と彼女のゲーム戦争」/電撃文庫



高校三年になってから元女子高に編入するコトになった主人公・岸峰がゲーム活動を始めるという話。

全くゲームに触れたコトの無い人間がここまでいきなり出来るのかという疑問は拭えないが、そこはフィクションと割り切るしかない。読書好きという設定が序盤執拗に描かれているので、一応岸峰の武器である集中力が自然に受け入れられる。まあ、集中力というのも定義するにはあやふやなパワーだがな。没頭する力みたいな感じで描かれている。

どちらかと言えばラストで悔しがって泣くという行動こそまだゲームの上達速度として納得出来る。いや、よくある「負けてこそ強くなる」的なコトを言いたいワケではなく、座禅組んで瞑想している禅僧、位が高い僧ほど棒で殴られると脳波とか心拍数が乱れるみたいな話で、イレギュラーな行為に対して慣れないってのが重要だと思える。死にまくるとそれに慣れてしまい、反省して次に反映する何かを得なくなっちゃうからね。大昔ゲーム雑誌の企画でもやってた覚えがある。ゲームが上手い人ほど死んだら凄い動揺していた、みたいなオチで。

ラストに金髪がちらりと登場しているが、2巻以降(シリーズ化)の算段が既にあったのか。

■浦賀和宏「とらわれびと」/講談社ノベルス



浦賀和宏作品の中では初期に入る一冊。安藤ってこんなヤツだっけ? あんま探偵役という感じではなかったし、ラストも何か小物的だし、生い立ち(親世代)も主役に相応しくない。父が半端モンってのは新鮮でもあったよ。

最後の一行的なカタルシスはなく、解決編は結構丁寧に犯人の行動やらが明かされるタイプ。気持ちよく驚く、というコトはなかったが、綱渡り的な行動だったしこれぐらいくどくなっちゃっても仕方ないか。妄想めいたシーンも意味を成す解決があったし。

浦賀作品は読みやすい記憶があったが、これは序盤だけは中々頭に入ってこなかったな。登場人物が多く視点もコロコロ変わるからかな。文章自体は読みやすいし、熟れている。年相応の背伸びとか感じられるけど、同じ描写の繰り返しも多くて乗ってくれば割りと加速して読めて心地良い。

■夢枕獏「陰陽師 天鼓ノ巻」/文春文庫



「瓶博士」「器」「紛い菩薩」「炎情観音」「霹靂神」「逆髪の女」「ものまね博雅」「鏡童子」、以上8編収録。

琵琶法師の蝉丸が多めの巻。これまでもずっと女房の霊に取り憑かれていたとか見せ方によってはもっとサプライズになり得るものだが、連作短編形式である以上それでガツンと来る演出は難しいか。

当シリーズの安倍晴明は元々あっさり解決するキャラであるが、今巻はいつもに増してテキパキ処理しているな。グダらないのは良いことだけど。

何かどんどん一話辺りの文量が減っていってるよ。8編入って240ページだよ。コンパクトに纏めるようになった、のかなあ? 気の所為/読んだタイミングかもしれないが、しつこく事細かに繰り返し描写するような感じをあまり抱かなかった。くどさがちょっと減ってきたかも。ある程度分量あった上での疾走感を求めているので無駄省くのも少々寂しい。

■小木君人「その日彼は死なずにすむか?」/ガガガ文庫



僕は死んだ。何もいいことがない、17年の人生だった。……でもマキエルと名乗るいきものが言うには、もういちど10歳からやり直し“奇跡の欠片”をあつめれば次な死なずにすむらしい。北欧から転校してきた明るいソフィア、絵がうまいとも実、甘えさせてくれる隣のお姉さん弥宵-----奇跡の欠片がなんなのかマキエルは教えてくれなかったけど、僕はまえはぜんぜんできなかった、身近な女の子たちとのふれあいをたいせつに生きよう、今度は悔いを残さないために、と思った。だけど……。

面白そうな設定。しかしそこはガガガ文庫。第三回ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作なんて肩書を持っていても所詮ガガガ文庫。基本は抑えてそうでいて何か歪で、どこかズレてて、ちょっくら浅い読後感は否めない一作であった。

しかし、奇跡の欠片なるキーが、物語導入から予想されるような『新しい人生で頑張った経験、それが奇跡の欠片だよ!』的なベッタベタなものではなく、即物的利己的合理的なものであったのは良かった。このアンサーも正直どうかと思わなくもないんだが、正道ではないという意外性だけで自分はイケた。

後書きも稚気に溢れてて恥ずかしいコト書いちゃってるけど、このデビュー作で終わって無くてその後も数作出しているのね。容れ物(この場合ラノベ)を変えればこれぐらい歪な展開でもアリな作風だと思える。人はラノベにはもっとベタと分かり易い倫理を求めてしまう。

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Author:七瀬
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(これは藤林杏の為の歌じゃない)
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(失った信頼の為に黙祷するやつはいない)
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(あの生き物はマス受けするTシャツ男になるつもりはない)
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