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■夢枕獏「キマイラ6 如来変」/角川文庫



菊地がどんどんパワーアップしてきて面白い。殺す気で、死んでもいい気でかかってくる何でもアリのヤツは強いな。この辺の強さ、バキの死刑囚にもあった。特にドイル。菊地はまだ社会に保護されている部分があるので、ガチで命のやり取りするような世界に飛び込んだらどうなるんだろ。流石に死ぬだろうから、通用するぐらいまでは典膳に守られていて欲しいな。典膳もそういう保護するようなキャラじゃないけど、そこは作者の采配で。

一方で龍王院弘がどんどん落ちていく。遂にはそこらの酔っ払いにすら負ける。犬を食っていた過去の自分に戻り、一からやり直す気持ちになっているので弘もこれからはようやくパワーアップするのか。夢枕獏作品でギラギラしたヤツに懐く犬はひどい目に会う。

大鳳がキマイラ化して元に戻れなくなっている模様。意識は保っているし人間の言葉も辛うじて絞り出せているが、半分獣のような姿の様子。脇キャラの動きが楽しいので主人公がイマイチ活躍していなくても読める作品。

■笹沢左保「木枯し紋次郎(十三)」/光文社文庫



「人斬りに紋日は暮れた」「明日も無宿の次男坊」「女郎にはたった一言」「生国は地獄にござんす」、以上4編収録。

これは微妙。紋次郎のキャラがブレている。「人斬りに紋日は暮れた」で約定を違えて見逃すのもおかしいし、その他の作品でも紋次郎が他人を詮索しまくっている印象。関わらないキャラだったのに自分から色々聞き出そうとしているってのに違和感。

キャラがブレているので本来全集的なものに収録しなかった作品を、今回は全て網羅すべく載せたのかなとか思ったが、「あっしには言い訳なんぞござんせんよ」という新しい口癖が出て来るし、過去作一覧から選別して外してたワケではなく、集中的に書いてた連作っぽい。うーむ、作者も紋次郎から離れててよく分からなくなった後期にキャラ人気だけでひねり出した数篇なのかも。

解説無し。ただし作者笹沢左保自身による紋次郎制作秘話な後書きがある。ここは収穫。シリーズ作品にする上で主人公キャラが欲しかったので紋次郎というのを作ったとかそういう話。が、よくまあこんな動かし難いキャラ設定にしたなあと感服する。

■鎌池和馬「とある魔術の禁書目録 SS」/電撃文庫



普段は一冊に一つは意識している柱/テーマが無い、というぐらいで13巻の続きとして成立している。読む前はてっきり完全な番外編でギャグ寄りの短編集なのかと思っていた。ていうかこれも読まずに13巻から14巻に移ったら戸惑いそうでもある。

学園都市とローマ正教との戦争を前にした、準備回という感じ。なのに、スキルアウトなる第三勢力が登場してカオス度が増している。良い。二項対立よりもこれぐらい混沌とするほうが先が読めなくて面白い。スキルアウトは能力者恨んでるポジションだけどローマ正教とも対立してくれそうで、三つ巴状態になるのが楽しみ。

一方通行がそんな凡人のスキルアウトの一人に追い詰められるのも宜しい。案外弱点多いな。チームワークが無ければどうにもならなかったってのも良い。スキルアウトは警戒に値すると読者に思わせた、良いバトルであった。

■松枝蔵人「瑠璃丸伝 1」/電撃文庫



風魔、伊賀、甲賀、根来、戸隠、陀毘泥(南蛮妖術)それぞれの頭領が東京で擬似家族として暮らし、来るべき至上の使命の時に備える、そんな話の様子。使命はラストで明かされる。どうやら魔王退治らしい。

忍者作品の傑作「甲賀忍法帖」での統合悲願が悲劇になる結末を吹き飛ばすような全勢力家族一員状態がまず面白い。上手いコト年齢も散ってて、おじいさん役や父親役が揃っていてキャラの振り分けも分かりやすく宜しい。母親役の紅音が三十路であるが、大学生の長男がいる家族設定としてここは微妙か。でも30代って言っても39まであるからな。

末娘役の風華が何かと「ころそう」と簡単に言ってたちが悪くて宜しい。

ヒロインの竜造寺翔子、中盤の印象が珍しい感じだった。瑠璃丸に対する態度がどうにもワルに惹かれる娘みたいなキャラに思えた。吉良吉影に惚れ込む川尻妻みたいなあのDQN嗜好な感じ。が、そんな印象も後半の試験パートで拭われ、どうやら健全なメンタルを見せてくれて一安心だったよ。

これ、電撃文庫第一弾の一つだったのか。いつから電撃文庫というレーベルが出たのか気になっていたが、この頃だったのか。巻末に収録されている広告、「クリスタニア」とか「極道くん」とか懐かしい。

■夢枕獏「魔獣狩り 淫楽編」/祥伝社



〈精神ダイバーとは人間の頭脳に潜入し、その秘密を探り出す特殊技能を持った戦士である……〉
超過激集団黒士軍から一億円を奪った文成仙吉は逃亡中の山中で闇の祝祭・乱交の儀式を目撃し、何者かに襲われ腕を食いちぎられた。一方、聖域高野山で空海のミイラが盗まれ、密教術の達人・美空と精神ダイバー・九門鳳介が直ちに事件の謎を追うが巨大な獣人・蟠虎の凄まじい攻撃にさらされる……。夜に蠢動する秘密教団“ぱんしがる”と日本の政治権力と暴力団を支配する黒御所の陰謀とは?

最初の書き下ろし長編になるはずだった、と作者が語っていて、夢枕獏の基本キャラが網羅されている感あり。主人公三人、いや群像劇なノリなので誰が主人公なのかわからないが、巨大な敵に立ち向かう側のメインキャラ3人がホント夢枕獏作品の主人公三種三様になっている。

サイコダイバーの久門鳳介。サイコダイバーシリーズと銘打たれているのでこの人が主役中の主役なのかな? 粗暴そうでいて、しかし繊細なサイコダイブの様子からして相当賢いパターン。夢枕獏主人公いるいる。

美空。容姿端麗で体術にも優れた天才僧侶。仏教方面のキャラで、夢枕主人公いるいる。

文成仙吉。格闘系。夢枕主人公いるいる。ただ本当にただの格闘方面に全振りしてて、サイコダイブとか密教の謎パワーとかそういう連中の中にいるには一般人過ぎる。出て来る作品間違っているよ。そういう意味で死相が漂っているんだが、そこはそれ。作者が気に入ってそうなキャラなのでしぶとく生き残ってくれそうでもある。

全25巻で完結済の作品。この1巻の段階ではまだとっ散らかってて、消化不良であるが、今後どんどん楽しくなっていくだろう。そういや後書きで「まだ進行中の物語前半を、ここにようやく上梓」と書いているんだが、まさか二冊で終わらせる気だったのか。またか。またそのパターンだったのか。

■一肇「フェノメノ 参」/星海社FICTIONS



前巻の続き。後半部分。篁亜矢名に関する話が一応の決着を見せる。見せるが、圧倒的な存在だったので、このまま終わるのかどうかも怪しい。エピローグで夜石、篁に完全敗北宣言をしているし。まあでもこの幕引きはホラーの常套の余韻を理路整然と語ってみただけで、再登場とかはしないのやも知れぬ。

ファフロツキーズ現象の答えは微妙ながらもこの作品ならではの解釈だったので良かった。謎空間も唐突で戸惑ったが、そこに居た篁の存在感も良いし比喩も楽しいし建物自体が装置になっていた大掛かりさも良い。

それとこのシリーズ、箴言にしたい台詞がボンボン出て来るんだが、何故か頭に残らない。目についた端からメモるとかしたほうがいいのかな。何か読んでて目が滑っちゃうんだよなあ。

■支倉凍砂「狼と香辛料 2」/電撃文庫



細かい詐欺ネタが面白いな。序盤の天秤の仕掛けとか。

2巻でいきなり絶体絶命な危機に陥るロレンス。借金を2日3日で返さないと奴隷船or鉱山送りレベルの危機。タイムリミットで面白さは増すし、それをクリアする手段で密輸というのが出てくるのも良い。聖人君子じゃないのが素晴らしい。商人主人公だと駆け引き部分や自身を納得させるモノローグが綺麗事ばかりじゃないので読んでて気持ち良いよ。

今回もラストでホロが狼化して暴れる。これもカタルシスあるなあ。切り札を見せて相手の鼻を明かすこの瞬間が痛快だし、知略戦で裏切った相手に力で圧倒するのは気持ち良い。暴力にはカタルシスがある。商売、言うなれば頭脳戦を扱っている作品でありつつ、ラストで暴力の快感が待っているのは、構成が上手い。「話の分からないヤツは殴って終了」という原初的快感を押さえている。

■赤川次郎「孤独な週末」/角川文庫



4編の中短編が収録。

■「孤独な週末」
100ページほどある中編。夫の連れ子と二人っきりで三日の間山荘で過ごすコトになった新妻が、その義理の息子に様々な悪質トラップを仕掛けられる話。息子、11歳にしては行動心理学に長けててメッチャ怖い。荒木飛呂彦の絵/漫画で読みたい。

■「少女」
収録されてる4作品の中では一番好みだった短編。最低限の登場人物で、ラストに鮮やかな黒白反転がある短編で、連城三紀彦作品の面白さに匹敵。

■「尾行ゲーム」
読み始めて数ページで『あーこれって奥さんに逆に尾行されているんじゃないのかなー』とか思ったが、そんなコトは全く無かった。上手いとされる短編って、序盤でオチに至る何もかもが伏線として仕込まれているんだけど、そういうのって何気にオチが即バレやすい。で、自分はそのタイプの短編かと思って上のように考えたんだけど、気持ちよく裏切ってくれた。
この作品はそういう着地の綺麗さよりも、展開のジェットコースターっぷりで面白さを出していた。オチが読める落語的まとまりよりもこういう予想外方向に突き進んでくれるほうが楽しい。

■「凶悪犯」
狙撃班という滅多に活用されないチームが解散の危機に陥っている中、ピストルを持った強盗がスーパーに立て籠もったので、活躍するチャンスとばかりに事件をややこしくしようとする流れ。ユーモラスなんだけど後味が悪いかな、これは。まあ、赤川次郎のユーモア系って最後の最後だけシリアスに締めくくるものも多いと感じているので、これもその一つなんだろう。短編だけに唐突に嫌な気分にさせられた感が強いだけで。

■夢枕獏「キマイラ5 菩薩変」/角川文庫



大鳳が浮浪者と共に生活しているのが面白い。浮浪者生活を作者が書きたくなったんだろうか。弱者の中に溶け込んで大鳳が自分を抑え込む訓練をする、みたいな流れもあるが、そこで浮浪者を選ぶのが面白い。

龍王院弘の師である天膳も引き続き活躍、菊地を弟子に選ぶ。無軌道で荒れているものの実力が伴っていない菊地がようやくパワーアップするフラグが立った。菊地が今のトコロ今後どういう役目を担うのか一番気になっているよ。龍王院を倒すぐらいになってくれないかなあ。ストロングスタイルの凡人が綺麗な勝ち方に拘る天才を打ち負かすというのはベタながらもするりと入ってくるしな。ただ弘も負けを経験しているのでこれからパワーアップするんだろうし。主人公周りよりも脇のほうが気になる。

雲斎、外法のチャクラを回すコトに成功、しかし雲斎ほどの人物をもってしても生死の境を漂う事態に陥る。飢えが重要項目のようで、生肉ガツガツ求めるキマイラもその辺に共通点がありそう。

■赤川次郎「忙しい花嫁」/角川文庫



この物語のヒロイン、塚川亜由美。私立大の文学部に通う二年生、少々あわてんぼうの十九歳の娘である。
彼女はクラブ活動の先輩・田村の結婚披露宴に招かれたが、どうも様子がおかしいのだ。花婿の田村は暗い顔をしているし、その上、当の田村が「そっくりだが、花嫁は別の女だ」と謎の一言を残し、ヨーロッパへハネムーンに旅立った。その後、田村は行方不明に……。そして第一の殺人が---。

楽しく読めた。ネタバレになるが、この作品の面白さ/意外性は亜由美の主観に読者が引きずられるから、という部分にある。亜由美、人を見る目無いよなコレ。亜由美のモノローグで周辺人物のひととなりが読者に刻み込まれるので、そこがミスリードにもなってる。ずるいというか上手い。ユーモア系の文体なのでその辺のフェアアンフェアは結構どうでもいい感じで読めたよ。解説でアクロイドがどうのって書いてるのはこの辺のコトなのかな?

色々な事件が起こるが、全てが繋がるワケではなく、その事件はたまたまでした/事故でした、というものも含まれているのが凄いかな。そこもまたユーモア系なのでと自分はスルー出来たが。

プロローグで有賀が亜由美にさり気なく田村の結婚式を思い出させる描写が憎い。コマとして巻き込む気満々ではないか。」黒幕らしい働きを見せている。ここで亜由美が動かなかったら全て頓挫していたんだろうなあ。いや、頓挫しそうだったからの行動だったのか、これは。

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