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■夢枕獏「陰陽師 飛天ノ巻」/文春文庫



「天邪鬼」「下衆法師」「陀羅尼仙」「露と答へて」「鬼小町」「桃園の柱の穴より児の手の人を招くこと」「源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと」、以上7編収録。

「鬼小町」が出色。この飛天ノ巻は当シリーズの連作短編集として、二冊目になるんだが、この時点でこういうオチの話を作っていたのか。安倍晴明が「これは無理」と投げちゃうオチ。びっくりしたわ。扱ってるキャラも誰もが知る的な存在だし、作者も晴明万能素敵!の糧にし難かったのかなあ。いや、初期だからこそまだ晴明をカリスマ化させてなかったが故のこのラストだったのかも知れないな。

「陀羅尼仙」が地味に現代的でツラい。坊さんが煩悩捨てれず二次元に淫しているという身も蓋もない話。夢枕作品の別件でならギャグになってたんだろうなあというオチ。陰陽師シリーズにもこういう話組み込むのか。まあ、仰々しいオーラ出しているので格調高い雰囲気に収まっていはいるんだがな。どちらかと言えばバカネタでしょコレは。

■笹沢左保「木枯し紋次郎 (十二)」/光文社文庫



「奥州路・七日の疾走」、以上1編収録。

長編。敵対する相手も大前田栄五郎配下の30人の刺客&一刀流の達人と長編に見合う強敵。まず対多ってのが紋次郎でも苦戦するのは過去作で周知の通り。一気に30人がかかってくるワケでもないが、それでも集団の利をきっちり活かして攻めてくる。短編ではだいたいラストで一回ある立ち回りシーンがこの長編では数回入る。草原戦がシチュエーションの珍しさも相俟って面白かった。

そして一刀流の達人。無敵に見える紋次郎でも、サシですら勝てない相手はこれまでも出てきており、この一刀流もその一人になる。戦わずに済ませられるかと思ったトコロでの相手の変心もいいし、戦い方も良い。どんな強敵だろうと、勝とうが負けようが勝負は一瞬。太陽を使うってのは魔界転生の十兵衛VS武蔵を彷彿させて熱い。

意外な人物が意外な正体を顕すミステリチックなオチもちゃんと健在で、短編のコンパクト感がない長編でも冗長な印象は無く、面白い一作であった。読んでて心底苛立たせるキャラがいて、珍しくもあった。

■鎌池和馬「とある魔術の禁書目録 12」/電撃文庫



コメディ寄りの巻。が、今回は助走段階に過ぎず、次巻への仕込み段階だった模様。後書きで知ったが、衣替えをテーマにあれやこれや書いていたらしい。今作の行間、既出キャラを扱っての掌編が繰り広げられていたが、言われてみれば確かに衣類絡みのネタだったな。

ベクトルを変える一方通行対策として、ヒット前に拳を引くという話がここで出る。何かと馬鹿にされているネタであるが、本当にバカでしょコレは。理屈は分かるがイメージとして実感出来ないんですけど。意識して直前でパンチを引くとかマジイメージ出来ない。

木原がいい具合にクズ発言連発しているお陰で一方通行が善人に見えてくるけど出自は悪党だからな、こやつ。作中で贖罪の術を迷っているし、作者も旧来の「倒されたらすぐ仲間になって善人」なお約束には疑問を持っていそうではある。

■夢枕獏「餓狼伝 13」/双葉文庫



松尾象山VS力王山。象山の勝利は規定としても、想像以上に苦戦していたし、力王山の散り方も見事。コミック版の影響で筆が乗って書いたんだろうし、もっと惨めな敗北をするのかと思っていたのでこれにはびっくり。最後の最後は長年付き合ってきた相撲で挑むなんてのもやたらカッコイイではないか。そして象山、作中最強で全ての戦いを余裕で勝ち抜いてきた印象だったのでここまで接する戦いをするとは、これにもびっくり。

ジム・ヘンダースンと堤城平の戦いも熱い。堤の戦いっぷりが奇しくも力王山に対する象山に似てて、しかしそれでもやっぱりちょっと甘かったものもあり、楽しい。

ラストは象山と姫川がいよいよ戦闘開始、というかどうせ軽く牽制しあって終わるんだろうが、スクネ流によって象山の攻撃を回避していて象山が驚嘆しているのがポイント。象山、これまでの無敵感がちょっぴりだけ薄れてきている。姫川が善戦出来そうなのが良い。

次巻からタイトルが「新・餓狼伝」に変更、新になってから三冊しか出ていないようで寂しいのう。力入れてた作品っぽいのに、それでも書けなくなってしまうのか。金に困らなくなったので書かなくなったタイプには思えないし、純粋に老いによる体力低下、だろうなあ。悲しい。

■師走トオル「僕と彼女のゲーム戦争 4」/電撃文庫



格闘ゲーム回。この巻は数年前に本屋でジャケ買いした記憶がある。表紙がキャミィ(のコスプレ)だからね。巨乳のキャミィという完全無欠の存在だからね。

今回の格ゲー話、以前のFPS/TPSの巻に増して説明が詳細で、時々自分は何読んでるんだろと素に戻る瞬間があった。ストーリーに落とし込んではいるが、いつも以上にジャンルの解説が深めに感じた。ジャンルというか、「スーパースト4 AE」限定で、更に言うなら主人公が選んだリュウに絞って話が作られている。自分はギリギリ興味を維持しながら読めたけど、作中で書かれていた格ゲーセオリー的なものは明日には忘れてる。

「妖星伝」という作品に、『人間は大きさの単位は幾らでもエスカレートさせたが、小ささにおいて秒以下の単位を作れなかったので限界が生まれた』みたいなフレーズがあったんだが、ゲーム界隈ではフレームなる単位が生まれちゃっているんだよなあ。で、多分フレームだの言い出したのって最初は格ゲーでしょ。今日日の格闘ゲームについていけている人は自分とは既に違う生き物に思う。

格ゲー・音ゲー・2Dシュー、この三つの中での極まっている上位領域、どれが一番狂っているのかなあ。だいたいのコトは努力でどうにかなるけど、その努力が通じない、持って生まれた才能が要求されるのはどれなんだろう。多分、全部だろうなあ。

■夢枕獏「黄金宮」(1~4巻)/講談社文庫



欲望と人混みの街・新宿----アフリカ人の戦士が現れ、いきなりやりで中年男を刺し殺す。通りかかった都内最強の男・地虫平八郎の腕の中で息絶えた男は奇妙な黄金の勃起仏と千鶴を持っていた。さらに地虫の前にブードゥーの呪術師が立ちふさがる。地虫は拳法で銀髪の呪術師を迎え撃つ。

未完作品。4巻目のノベルス版が出たのが1992年4月とのコトで、もう続きが描かれるコトは無さそう。分かっていた。未完と分かっていながら手を出したんだ。

仏教は何故西に伝達しなかったのか。いや、伝達していた。アフリカに伝わっていた。そんな着想から生まれた作品らしく、トンデモ感が甚だしく面白い。1巻冒頭で黒人が新宿に佇んでいるだけで惹き付ける面白さ。この導入はこの作品がギャグなのかシリアスなのか判断つかなかったよ。夢枕獏、ふざけた掌編も書くじゃん。そっち系かと戸惑ったよ。

密教とかも絡んで孔雀王チックな雰囲気もこの作者にしては珍しいし(陰陽師とか空海とか題材にしている作者だけど何か違う)、黒人どもの異能力者っぷりも風太郎忍法帖のノリで楽しい。まあしかし登場キャラを掘り下げている内に愛着がわいてしまうのか、結構どのキャラもしぶとく退場せずにうろちょろしてて、構想も長大化、放置というパターンになってしまったのかな。

この作品用に下調べしたネタ、他の作品に流用出来無さそうな感じもあるので(特にアフリカに仏教って部分)、このぶん投げ放置はもったいないなあとも思う。

■内田康夫「ユタが愛した探偵」/角川文庫



琉球王家最後の姫君が名門・井伊家に嫁いだ事から始まった彦根の名物行事「ブクブク茶会」。その行事に沖縄から参加した式香桜里は、幼い頃から「神の子」と言われる不思議な能力を秘めていた。数日後、彦根において香桜里の訴状を執拗に探っていた不審な男が、琉球王国の聖地・斎場歌儀で死体となって発見される。事件究明の依頼を受けた浅見光彦は、急遽、沖縄へ。

内田康夫作品読むのは多分初。浅見光彦シリーズのドラマは幾つか観たコトはある。ご当地ネタを存分に咀嚼して話に溶け込ませているので、その辺の周辺知識を得ているだけでも楽しいし、このシリーズは絵にしやすいからドラマになるのも何か分かる。

基地問題とか、自分はサヨクの暴れっぷりがあちこちに晒されて昨今ようやく知り出したぐらいの人間であるが、これは昔からの根強い問題なんだな。この作者のスタンスには微妙に同意出来ないものもあるが、それでもニュートラルに伝えようとはしていそうではあった。

あと沖縄って日本語圏だし今は県の一つに数えられてはいるけど、ホント昔は琉球王国なる別の国だったんだなと知れたのが収穫。日本になれなかったのが朝鮮、なれたのが沖縄。これぐらいの認識になった。

で、ユタ。イタコみたいなものらしいんだが、こんなミステリと反する霊能者を出してどうするのかと思ったら、どうもしなかった。風俗やら伝統やらを踏み躙ったりはせず、こういう胡散臭いものを合理に解体せず、そういうのもアリですという感じで描かれていて、そこは作者の優しさが見て取れる。探偵役のキャラが霊能者の発言にヒントを得るコトはあっても推理にその非合理を前提としていないので、まあミステリとしても許せる。

■佐藤さとる「ふしぎな目をした男の子」/講談社文庫



コロボックルの超高速移動を視認出来る男の子が登場。ツムジという名前のコロボックルの老人との繋がりが描かれる。前作の感想でも書いたような覚えがあるが、特定のコロボックルと人間の組み合わせでエピソード一つ作り上げた感じ。こういう形で幾らでも作れそうではある。

タケルが老人と同じ名を持つ子供コロボックルに会った後、コロボックルの生態を予想するのが何か良いな。生まれ変わりではないのか、みたいな予想。年齢の割には賢しい憶測なのも良いし、情報が少ない中だとそれぐらい絞り込めない広めの予想をするのも当然っちゃあ当然。

二人の交流以外に、懐かしさを感じさせる情景描写も結構残る作品。この読後感は田んぼやらその手の田舎感覚を知らない現代っ子も味わえるのか、そこは気になるな。まあ、分かりそうではある。江戸時代生きてない自分でも剣豪作品とか楽しめているからな。

■夢枕獏「遙かなる巨神」/双葉社

「木犀のひと」「どむ伝」「魔性」「わらし」「蒼い旅籠で」「消えた男」「千日手」「遙かなる巨神」、以上8編の中短編とタイポグラフィックストーリー7編が収録。

後書きによるとこれが二冊目の出版物だった模様。初期も初期だけあり、改行率が低くて文章密度がある。作者の小説家生活による経験・熟練で失った物得た物をあれこれ考えちゃうな。

タイポグラフィックストーリーは梶尾真治の忠告を守りその後は控えたようで、良い判断だったと思う。文字をその絵面で表現するようなもので、今日日のAAとかオノマトペをそのまま書くネット会話SSみたいなものに近い臭いを感じる。

表題作にもなっている「遙かなる巨神」が割りと真っ向からSFしてて宜しい。巨人とは何物なのか? 明確な答えが出ないまま雰囲気重視で終わると思いきや、それなりにその正体に迫ろうとしていて、今となっては夢枕作品でこれは珍しい。いや、未知を既知にまできっちり解体してその正体が判明するワケではないんだが、ここまで割れたらSFとしてももう充分だろというトコロまでは行っている。

ここまで明かされなくても、今の自分なら幻想が合理に落ちないまま終わっても許容だったと思う。「遙かなる巨神」は原始人に重力だの天体だのと言った世界運用のルールが理解出来ないだろうという感覚を思い起こさせたし、このまま幻想で終わっても充分だったので、この掘り下げは意外で、結果楽しめた。この作品も再読なんだけど綺麗さっぱり忘れていたよ。

■鎌池和馬「とある魔術の禁書目録 11」/電撃文庫



このシリーズを読むのも一年ぶりで、かなり誰が誰だか混乱した。シスター関連で。シスターって、思い浮かべるビジュアルがほらだいたいアレなので、どれもこれもイメージ同じという。自分のコトなので、これは一年開けなくても混乱していたかもな。

相変わらずゲーム的な兵器の設定が面白い。強力な攻撃力を持つが、攻撃対象がヴェネツィア限定というのが非常にゲーム的で分かりやすくて良い。そういう武器ありそうだし。その武器を改良しようとするってのも、アイテムが飽和しててとんだ抜け道がある感じで良い。組み合わせ次第で作り手の予想外の効果が出るという、グリッチっぽい方法を見出している司祭が良い。

インデックス、学園離れて海外に飛び、他に強力なヒロインが居ないってのに、それでも活躍出来てないのが切ない。1巻ぐらいヒロイン出来る日は再び訪れるんだろうか。まあ、訪れんでしょうなあ。

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(これは藤林杏の為の歌じゃない)
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