両親を失った少年が復讐のために、日本最大の暴力団の組長を狙撃し逃走したことで、全国的なやくざ戦争が始まった。時を同じくして、新戦略専門家・宗像一佐は、レーダーから消えた、最先端の科学を結集した対潜哨戒機の調査を命じられ、事件の背後に、元同僚のゲーム理論家の影を見ていた。暴力団から逃げる少年と元同僚を追う男が交錯するところに見たものとは果たして…… 「デスノート」が連載され始めた時、自分が真っ先に思い出したのはこの小説だったりする。マイナーかな、と思って引き合いには出さなかったけど。この小説は「デスノート」とは正反対の結末を迎えるんだが。 再読。アベレージ高めの山田正紀小説の中でも屈指の面白さだったという記憶があり、改めてその面白さを体験出来た。傑作。面白かっただけに結構内容も覚えているんだけど、それでも再読に耐え得るものがあった。また燃えちゃったよ。日本列島を舞台に繰り広げられるゼロ和ゲームの極上の愉悦。この小説駄目な点が見当たらない。無理矢理言うなら、タイトルが安っぽさを醸し出しているかも知れない、それぐらいかな。 「天才による倫理観を度外視した思考」「プロフェッショナル同士の駆け引き」「ゲーム理論の衒学がストーリーに溶け込んでいる」、この3つが大きく自分が高揚できた部分。 宗像と藤野、この二人の天才が双方の知力を振り絞って、逆転に次ぐ逆転で繰り広げられる謀り合いが最大の魅力。倫理観は一切排除して、ただゲーム理論として削ぎ落とした戦略の鬩ぎ合いが息つく間もなく展開される。現場主義的なものを排した上での読み合いがもう楽しい。実際には机上の空論で終わるであろうものなんだけど、空論を実論の域に押し上がるハッタリ、これが作者の上手さ。フィクション/エンタメとして存分に楽しめる。 「チェス必勝法でのg4」「現象論理論にブレーンストーミング法を合わせる」「順序確定的決定プロセス」等々、ゲーム理論に関する衒学的なものを作中に唐突感なく自然に滑り込ませているのもイイ。これらの衒学だけでも単独に抜き出して楽しめるぐらい。そして宗像と藤野、双方の部下として出てくる佐伯と立花、彼等もまた頭脳派とは異なりつつもプロフェッショナル。アクション担当のこの二人、行動自体はさっくりと行動しているけど、プロが如何に判断したのかというのも描かれており、一挙一動の意味が深い。達人。この辺は、「トリコ」や板垣漫画の感覚に似ている。あのナレーション的な説明が、くどくなならないように地の文で説明される。 また20年後ぐらいに読み返したい作品だな。「謀殺の弾丸特急」もこの作品に匹敵する、いやこれ以上の面白さだった覚えがあるんだが、生憎手元に無い。畜生、実家か。処分されてなきゃいいんだが。
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