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■笹沢左保「木枯し紋次郎 (十)」/光文社文庫



「虚空の賭けた賽一つ」「旅立ちは三日後に」「桜が隠す嘘二つ」「二度と拝めぬ三日月」、以上4編収録。

「旅立ちは三日後に」は紋次郎が一定の地への永住を考える稀有な一編。内容はそんなに捻りのある話でもなかったが、あの紋次郎が永住を考えるという一点のみでイレギュラー過ぎてビビった。

「桜が隠す嘘二つ」は紋次郎がやたら饒舌になる稀有な一品。僅かな情報からガツガツ真相に食い込む紋次郎の探偵っぷりを久々に見た気がする。

「桜が隠す嘘二つ」「二度と拝めぬ三日月」の2編には国定忠治が登場。このシリーズで複数の話に登場するキャラは珍しい。他のエピソードでも昔紋次郎に会った人は出てくるが、読者的には初見の存在だからなあ。ていうか紋次郎、シリーズ始まってから作中時間で二年以上は放浪しているし、描かれてないだけでもあちこちに色々な関係残しているんだな。

■森博嗣「奥様はネットワーカ」/講談社ノベルス



複数の登場人物の主観による語りがザッピング形式で描かれるので、読みにくかった。渾名と本名二つあるってのも理由で序盤は人物把握に戸惑いまくり。舞台劇みたいだなーという気持ちで読んでいたらラストがそんなノリの幕引きであった。

以下ネタバレ。

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■師走トオル「僕と彼女のゲーム戦争」/電撃文庫



高校三年になってから元女子高に編入するコトになった主人公・岸峰がゲーム活動を始めるという話。

全くゲームに触れたコトの無い人間がここまでいきなり出来るのかという疑問は拭えないが、そこはフィクションと割り切るしかない。読書好きという設定が序盤執拗に描かれているので、一応岸峰の武器である集中力が自然に受け入れられる。まあ、集中力というのも定義するにはあやふやなパワーだがな。没頭する力みたいな感じで描かれている。

どちらかと言えばラストで悔しがって泣くという行動こそまだゲームの上達速度として納得出来る。いや、よくある「負けてこそ強くなる」的なコトを言いたいワケではなく、座禅組んで瞑想している禅僧、位が高い僧ほど棒で殴られると脳波とか心拍数が乱れるみたいな話で、イレギュラーな行為に対して慣れないってのが重要だと思える。死にまくるとそれに慣れてしまい、反省して次に反映する何かを得なくなっちゃうからね。大昔ゲーム雑誌の企画でもやってた覚えがある。ゲームが上手い人ほど死んだら凄い動揺していた、みたいなオチで。

ラストに金髪がちらりと登場しているが、2巻以降(シリーズ化)の算段が既にあったのか。

■浦賀和宏「とらわれびと」/講談社ノベルス



浦賀和宏作品の中では初期に入る一冊。安藤ってこんなヤツだっけ? あんま探偵役という感じではなかったし、ラストも何か小物的だし、生い立ち(親世代)も主役に相応しくない。父が半端モンってのは新鮮でもあったよ。

最後の一行的なカタルシスはなく、解決編は結構丁寧に犯人の行動やらが明かされるタイプ。気持ちよく驚く、というコトはなかったが、綱渡り的な行動だったしこれぐらいくどくなっちゃっても仕方ないか。妄想めいたシーンも意味を成す解決があったし。

浦賀作品は読みやすい記憶があったが、これは序盤だけは中々頭に入ってこなかったな。登場人物が多く視点もコロコロ変わるからかな。文章自体は読みやすいし、熟れている。年相応の背伸びとか感じられるけど、同じ描写の繰り返しも多くて乗ってくれば割りと加速して読めて心地良い。

■夢枕獏「陰陽師 天鼓ノ巻」/文春文庫



「瓶博士」「器」「紛い菩薩」「炎情観音」「霹靂神」「逆髪の女」「ものまね博雅」「鏡童子」、以上8編収録。

琵琶法師の蝉丸が多めの巻。これまでもずっと女房の霊に取り憑かれていたとか見せ方によってはもっとサプライズになり得るものだが、連作短編形式である以上それでガツンと来る演出は難しいか。

当シリーズの安倍晴明は元々あっさり解決するキャラであるが、今巻はいつもに増してテキパキ処理しているな。グダらないのは良いことだけど。

何かどんどん一話辺りの文量が減っていってるよ。8編入って240ページだよ。コンパクトに纏めるようになった、のかなあ? 気の所為/読んだタイミングかもしれないが、しつこく事細かに繰り返し描写するような感じをあまり抱かなかった。くどさがちょっと減ってきたかも。ある程度分量あった上での疾走感を求めているので無駄省くのも少々寂しい。

■小木君人「その日彼は死なずにすむか?」/ガガガ文庫



僕は死んだ。何もいいことがない、17年の人生だった。……でもマキエルと名乗るいきものが言うには、もういちど10歳からやり直し“奇跡の欠片”をあつめれば次な死なずにすむらしい。北欧から転校してきた明るいソフィア、絵がうまいとも実、甘えさせてくれる隣のお姉さん弥宵-----奇跡の欠片がなんなのかマキエルは教えてくれなかったけど、僕はまえはぜんぜんできなかった、身近な女の子たちとのふれあいをたいせつに生きよう、今度は悔いを残さないために、と思った。だけど……。

面白そうな設定。しかしそこはガガガ文庫。第三回ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作なんて肩書を持っていても所詮ガガガ文庫。基本は抑えてそうでいて何か歪で、どこかズレてて、ちょっくら浅い読後感は否めない一作であった。

しかし、奇跡の欠片なるキーが、物語導入から予想されるような『新しい人生で頑張った経験、それが奇跡の欠片だよ!』的なベッタベタなものではなく、即物的利己的合理的なものであったのは良かった。このアンサーも正直どうかと思わなくもないんだが、正道ではないという意外性だけで自分はイケた。

後書きも稚気に溢れてて恥ずかしいコト書いちゃってるけど、このデビュー作で終わって無くてその後も数作出しているのね。容れ物(この場合ラノベ)を変えればこれぐらい歪な展開でもアリな作風だと思える。人はラノベにはもっとベタと分かり易い倫理を求めてしまう。

■佐藤さとる「星からおちた小さな人」/講談社文庫



シリーズ三作目。飛行機械の試験運転中に墜落したコロボックルとそれを拾った少年の話。作者があとがきで当初完結編の予定で書いたと語っており、人間とコロボックルの間に新しい繋がりが生まれつつある感じでこのまま次代に広がっていくんだろうなーと思わせる内容。ここで終わってても打ち切り的な終わりではなく、拡張していく未来を予感させる良い締めくくりになったと思わせる。

コロボックル世界の科学の発達がやたら速くてビビる。もう空飛んでるのかよ。せいたかさんとおチビ先生が結婚して子供が生まれているけどまだ幼児、つまりそんな時は流れていないのに文明が人間で言えば5世紀分ぐらい発展している。

おチャメさん、幼児なのにコロボックルを既に認識していたり機転がやたら効いたりと、末恐ろしい存在だ。赤子の時からコロボックルに慣れ親しんでいるとあの高速トークもナチュラルに聞き取れるようになるんだろうか。

■夢枕獏「こころほし てんとう虫」/集英社文庫

「こころほし てんとう虫」「天竺風鈴草」「年末ほろ酔い探偵団」「二輪草の谷」「直径7センチのUFO」「風太郎の絵」「ほのかな夜の幻想譚」、以上7編収録。

「風太郎の絵」が印象に残った。初期作品でスルッと落ちないラストってのは夢枕獏としては珍しいんじゃないのかな。雰囲気も良好で余韻もあるが、自分がこの作者に求めている分かりやすさに欠けてて、読後戸惑った。後年はこの手の雰囲気で引っ張る作品もあるが、初期の短編でもあったのね。

それとは対象的に、「二輪草の谷」「ほのかな夜の幻想譚」はベッタベタでとても分かりやすく、あー夢枕獏読んでるなーという気持ちにさせる内容であった。

カラーが本格的に定まっていない時分の夢枕獏作品でもあった。螺旋やバイオレンス以前の時代。それでも山とか陰陽師っぽさの片鱗はあちこちに感じ取れる。

■トーベ・ヤンソン「ムーミン谷の十一月」/講談社



スナフキン、ミムラ、ヘムレン、ホムサ、スクルッタ、フィリフヨンカがムーミン一家を訪問するも不在、連中の帰りを待ちつつ疑似家族めいた生活を始める話。知らないキャラも混じっているが気にしない。このシリーズではいつものコトだ。差も当然のようにいたりいなかったりする。

いつもに増して寂静が甚だしい。11月、冬という季節がそれを演出しているのもあるし、あのムーミン一家がいないまま話が進むというのも大きい。事実上の最終巻で主人公連中がいないってのは凄い。

今回集まった連中はムーミン一家のそれぞれに理想を見出している。ムーミンママはこういう人物像だがこの人はそれに届いていないだの色々と不満を抱えながら擬似家族状態になっている。が、最終的には違っているのは当然として受け入れ、それでもムーミン一家とは異なる形で理解し合い、それぞれの問題/蟠りを解消するラストになる。

『ムーミンシリーズを長らく書いてきた。この一家は理想に映ったかも知れない。でも、君らも理解し合えばこうなれるよ』。作者からのそんなメッセージを勝手に受信させていただいた。

そもそもムーミン一家不在は何だったのか。ラスト、船で帰ってくるし、前巻「ムーミンパパ海へいく」と同じ期間の話になるのかな。前巻、ムーミン一家が孤島でギクシャクした状態に突入していたし、理想の家族っぽくてもちょっとしたコトで不穏な関係になるよ的な話だったのやも知れぬ。そう考えると、前作今作は対を成しているとも見れる。

■夢枕獏「キラキラ星のジッタ」/集英社文庫

「キラキラ星のジッタ」「そして夢雪蝶は光のなか」「妖精をつかまえた」「夢蜉蝣」、以上4編収録。

「妖精をつかまえた」が良かった。終わってみればシンプルなタイムトラベルものであったが、導入の幻想的な感じが宜しい。「月に呼ばれて海より如来たる」みたいな何が起こるか分からない手探り感が好みであった。

「夢蜉蝣」は毛色がやや異なり、この箱に入っているからついついファンタジーな路線で読んでいたが、ホラー風味強めであった。

初期故か密度があってそこも新鮮であった。言葉をポンポン置いていく「餓狼伝」みたいなものも読んでて疾走出来て好きだが、こういう夢枕獏の「普通の小説」もアリであったよ。

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(これは藤林杏の為の歌じゃない)
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