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■浅暮三文「ダブ(エ)ストン街道」/講談社文庫



タニアを見かけませんか。僕の彼女でモデルなんですけど、ひどい夢遊病で、ダブエストンだかダブストンだかに探しにきたんです。迷い込むと一生出られない土地なんで心配で。王様? 幽霊船? 見ないなあ。じゃあ急いでるんでお先に。

第8回メフィスト賞受賞作。まだメフィスト賞作品が出たら即追いで読んでた時期の作品のハズだが、内容何も記憶に無いので、これは読んでなかった模様。

ひたすら面白かった。自分がまず思い出したのは「平行植物」。架空の植物の特徴をあれやこれや学術書風に語る小説。で、この作品はその架空生態のノリを植物限定ではなくダブエストンなる地域で作り上げている。

ダブエストンは誰もが迷う大地という設定。誰もが迷うというのを前提にしてその環境下でならどういう風俗、建築様式、生態、宗教、思想、食生活、職業が発生するのを描いている。独自の異世界を丸ごと作り込んでいてそれを楽しめる幻想小説。

ただし、その内容は別に読者にリアルさや納得感を与えるような描写ではない。世界観は文化発展/進化の信憑性より、ユーモアや意外性が優先。例えば動物も道に迷うので喋れるようになったみたいな話がある。「いや幾らなんでも道を知りたくて動物が喋れるようにまでは進化したりしないだろ」的な非リアルさ。このユルさが、「不思議の国のアリス」みたいなシュールな雰囲気を醸し出していた。

この謎のエリアに迷い込んだ主人公ケンが旅をしつつ、初見故に戸惑うあれやこれやに、同行者や周囲の人間がダブエストンの常識を教えつつ、ワケの分からない文化を主人公と共に読者が味わっていくという構成も良い。旅している感ある。訪れる場所も森や平原、都市とメリハリに富んでいて飽きさせない。過程過程の旅を楽しめるし、赤い影やタニアという、ラストにどういう着地を見せるのか惹きつける謎もある。

オチも宜しい。人の生き様への作者なりのアンサーまで描きつつ(しかも共感度高め)、清々しい読後感を味わえた一作。

■甲田学人「Missing3 首くくりの物語」/電撃文庫



序章で正反対の思想で会話している二人がどちらもラスボス感たっぷりな思想で宜しい。

前巻で大迫栄一郎がいつ登場するのか気にした感想を書いたら、すぐにこの3巻で出てきて驚く。一応故人になってはいるが、死して尚、書籍以外にも影響を及ぼし、再生の機会がありそうな雰囲気。強い。3巻でこのエピソードは終わっておらず、恐らく4巻で終わるのだろうが、果たしてそこで大迫栄一郎を使い切るのか分からない。毎度冒頭で大迫の書籍の引用をするスタイルになっているし、このエピソード以降も登場しそう。つまり、ここで片付けられるコトはなく、別のバックアップもとってそう。

歩由美と稜子が同じ異界要素に関わっているので、非レギュラーの歩由美がバッドエンドで稜子でそれを回避するのかなーと予想している。が、前編に相当するこの3巻で歩由美が今巻で死んでないので両者とも生存しそうな気持ちになってきた。

■赤川次郎「失われた少女」/角川文庫



雪に埋もれた別荘で、ひとり静かに暮らす作家伊波伸二。彼の所に、見知らぬ少女が倒れ込んできた…。それと同じ頃、近くの空き家では、血痕が発見され、村上・小池両警部が捜査に乗り出していた。実は小池の妻は、以前、伊波と特別な関係が……。次々と殺人を犯す雪男の正体は? やがて、事件に巻き込まれていく中で、少女は伊波を愛するようになっていった……。

幾つかの事件が平行して進み、終盤までどう着地するのか分からなかった。強引な終わらせ方には感じたかなー。綺麗にまとまってそうで、あちこち「それ、いいの?」みたいなシーンもあったし。律子と伊波のあれとか。有耶無耶に終わらせるのかそれって感じで。クリーン一辺倒ではない、大人な作品だ。

終わってみればイマイチにも思うんだが、読んでる最中は毎度の赤川次郎で展開が気になって仕方ない出来であった。オチの微妙さを打ち消すぐらい、途中途中を楽しめたよ。白銀舞台を寒々とした1月に読むのはマッチすると思ったけど逆にダイレクトに極寒感覚が伝わってきてちょいツラであったが。

■渡瀬草一郎「輪環の魔導師」/電撃文庫



神々はその世界に祝福を残し、そして去っていった----
辺境の地、ミストハウンドに暮らす見習い薬師のセロ。優秀な魔道具職人を祖父にもちながら、その孫たる彼は何故か魔道具を造ることも使うこともできない。祖父の亡き後は主のオルバドに仕えつつ、薬師としての修行に日々を費やしていた。そんなセロのもとに、ある日、王立魔導騎士団のハルムバックと名乗る青年が現れる。彼は“祖父の遺品”の魔道具に興味を示すが----

ベッタベタのファンタジー作品で、序盤から特有の造語/固有名詞連発で戸惑ったが、いざ軌道に乗るとするする読める作品であった。悪い意味ではなく、どこまでもテンプレなのがありがたい。王道。例えば前日読み始めた「狼と香辛料」はファンタジー世界ながらも商業題材の作品であったが、こちらはとことんファンタジー。ザンスとかロードス島とかあの感じのノリを現代感覚で楽しめる。

伏線が分かりやすく、読んでて予想通りに進むのも良い。ちょっと読み飛ばしちゃったようなシーンがあっても補完出来るという意味で、こういう王道は有利だと思う。セロの能力もこの手の魔導系で主人公が持ってしかるべき力で、分かりやすく盛り上がれる。

主要3キャラそれぞれが今後の展開で明かされるであろうサムシングを秘めててどれも素晴らしい。ほぼ明かされたセロもそうだし、フィノも目絡みで何か来そうだし、アルカインは正体含めて色々膨らますコトが可能。うん、ベタだ。ベッタベタで宜しい。

また、アニメにしたらこれメッチャつまらなくなりそうだなーという感想も持った。話のベタさよりも描写の緻密さで底上げされている作品だし、簡易にストーリーなぞるアニメになったら持ち味が失われそうだな、と。実写版「ロード・オブ・ザ・リング」ばりに金かけた実写化されるとかなら話は別だけど、メディアミックス向きじゃない作風なのが作者損してそう。

■支倉凍砂「狼と香辛料」/電撃文庫



独り立ちして7年の行商人ロレンスと豊作を司る狼の神ホロのコンビによるファンタジー世界を舞台にした商業小説。

ただただ説明的な商売薀蓄ネタで構成されている小説だろうか?等と不安一杯で読み始めたが、きちんと起伏があって展開にハラハラ出来る内容で一安心。これも全巻買ってるからな。ハズレだったら残り苦痛になるトコロだったよ。

詐欺めいた駆け引きとかそういう路線もあって面白い。ホロが無謬ってのも良い。嘘発見器みたいな存在。相手が嘘をついている、そこまでは分かるが、意図/動機までは分からない。それを探るのはどちらかと言うとロレンスの役目。良い組み合わせだ。

ホロの正体、ロレンスのみが知ってそれをずっと隠し通すシリーズなのかなと思ったのに、1巻終盤で思いっきりバレまくっているのは意外だった。知る者にはすぐ分かる名前だし、序盤で人間形態でホロと周囲に知られていいのかなコレと思っていた部分も仕込みだったようで、終盤には回収される。伝説みたいな存在だろうに、受け入れている連中には違和感も覚えたが。

謎タイトルもラストには回収。とってつけたような香辛料部分であったが、今後活かされる話も生まれるのかな? このシリーズも続きが楽しみ。

■赤川次郎「おやすみ、テディ・ベア」(上・下)/角川文庫



「探してくれ、熊のぬいぐるみを! なかに爆弾が隠されている」
21歳の女子大生野木由子は、アパートで爆死した友人中原の遺言で、爆弾入りのテディ・ベアの行方を追うが…。熊を手にした少女は変質者に殺され、次に手にした主婦の浜本静枝は、日頃冷酷な夫の仕打ちに耐えかねて、5歳の娘を残して自殺を……。かわいらしい熊のぬいぐるみは、由子をあざ笑うかのように、それを手にした人々に不幸をもたらしていく……。

ぬいぐるみを中心に、オムニバス的な話が連続する内容。面白い。爆弾が仕込まれているというスリルもあるが、純粋に各人物達とその周辺での事件が読んでて興味を惹く作りになっていて楽しい。これもまたページを繰る手が止まらなくなってしまう作品。上下分割なので強引に中断出来たが、読み始めたらその巻のラストまで持ってかれていたよ。

不幸をもたらすテディベアであるが、生き残った者には不幸ばかりではなく、成長ももたらしている。ここが中々憎たらしい。割り切った是非やメッセージがあるワケではない、面白さ優先の作劇がかえって展開を読めなくする赤川次郎の上手さの一つだろうか。自分の好きな作家の山田風太郎にもこの絶妙さは出せないケース多々あり。山風は昔の作家でもあるので、「これしっぺ返しの前フリだろうなー」と読者が悟ってしまう。

幕引きがあっけないんだが、それもオッケー。余韻は最低限、読者におまかせってのも心地良い。

赤川次郎、10年20年前にはまっていれば良かったなあ。きっと貪るように読んでいただろう。そうすれば、今頃には面白かった記憶だけは持ちつつ内容自体は忘れて、二周目に突入できていただろうに。今からでも遅くないと考え、20年後にそれを体験すればいいんだけど、20年後はもう老衰で死んでるよ、自分。

■森橋ビンゴ「東雲侑子は短編小説をあいしている」/ファミ通文庫



青春小説、になるのかな。大きな事件が起るわけでもなく、淡々と時間が過ぎていくんだが、ちょっとした出来事一つ一つに対する三並英太の心理を丁寧に描いてて、読んでて彼と同じように感じるコトも多く(ややネガティブに構える辺りが)、ストレス無く最後まで読めた。

東雲の寡黙な造形にテンプレを感じていたので、ラストの種明かしが面白かった。何を考えているか分からないキャラの内面の見せ方として上手い。このオチも男の妄想込みであざとい作者だ。うむ、もっとやれ。二冊目も楽しみ。

英太の有美に対する失恋めいた気持ちが何かしつこく感じたかな。兄の彼女を無邪気に慕っていた過去、それに対する気恥ずかしさ。この年齢なら仕方ないコトなのかなあ。黒歴史的なこっ恥ずかしさが沸いてくるのやも知れぬ。

■甲田学人「Missing2 呪いの物語」/電撃文庫



木戸野亜紀の元に連夜届く呪いのファックス。連日の異変、そして日に日に憔悴していく亜紀を前に空目が動く。今回はそんな感じのシリーズ二作目。

一作目で京極堂シリーズっぽい印象を受けて、それを引きずりながら読んでいる。呪いを扱っててまずはその衒学に始まる辺りも何かそれっぽい。そしてそれが楽しい。京極堂と違って空目の解説は読んでて取っ付き易い。いや…どうだろ? 一般論の誤解を解きほぐしながら理路整然と語ってくれるのは両者共同じか。でも空目のほうがやっぱ分かりやすい説明に感じるな。単純に尺の都合で脱線が少ないからかも知れない。

思っただけで対象を傷つける、時には殺すという力は難儀なのかもなあ。自分は欲しい力だけど。亜紀ぐらい若くて常日頃から沸騰してる年頃には大変な力だ。

冒頭の著作物引用で出てくる大迫栄一郎が今後話にどう関わってくるのかも気になる。神野陰之がそうなのか、それとも神野が語る魔王ってのが大迫なのか。館シリーズの中村青司はもうラスボスに出来ないポジションだけど、大迫はどう転ぶか分からないので楽しみポイントの一つになっている。

■師走トオル「僕と彼女のゲーム戦争 10」/電撃文庫



最終巻。この巻のラストは数年後を描く形になってて、感慨深い。「俺達の戦いは~」的に終わるとも思っていたので、本当に終わってしまったのだなあという寂しさがある。続編とか無さ気な終わり方。前向きな終わり方ではあったけど、どことなく切ない。

扱っているゲームは「ディビジョン」「オーバーウォッチ」。作品テーマの都合上チーム戦に比重がかかったゲームばかりで、自分が触れてないものもこのシリーズ後半は増えてきたよなあ。「オーバーウォッチ」は未プレイながらも、読んでてこれは面白いなという戦略が描かれてて楽しかった。三人同時自爆とか忍者三キャラで翻弄とか。
権田原のラストの行動が神がかっていて素晴らしい。シラフなのに涙ぐんでしまった。何で涙腺に来たのか分からないよ。

というワケで、楽しいシリーズであった。登場キャラクターの性格とゲームの戦術が合致しててメリハリついてたし、ラブコメ方向に舵切りしないまま進めたのも好みであった。元々キャミィコスプレの表紙で買って積んでた本であったが、いざ手にしたら続き買い足して読み終えるまでには面白かったよ。

■夢枕獏「キマイラ4 魔王変」/角川文庫



九鬼が動き出す。学校に来て各部主将と素手で対戦、ほぼ傷つけずに圧勝して去る。菊地は今度どうなるのか。ただただ邪気に染まっていくが、永遠の雑魚のままではいられないはず。キマイラ化せずとも、強さを求める余り何かの実験材料を買って出そうなキャラではある。

九鬼、深雪に手を出す。性的な意味で。九鬼の由美魅への執着、こればかりはどうにも小物感が否めないんだよなあ。由魅がとんだ曲者で必要以上に九鬼を翻弄しているのかも知れぬ。九鬼、もっと冷静な性格だろうに。

前巻で九十九に敗れた龍王院弘、そのまま気絶から目覚め、そしてその場でボックに圧倒される。気持ちを奮い立たせて蹴りを放ったものの、虚空を切るというオチ。弘も今後成長して再登場するのかなあ。ここまで一気に落ちぶれるのは意外であった。

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