1. Top » 
  2. 読書

■佐藤さとる「星からおちた小さな人」/講談社文庫



シリーズ三作目。飛行機械の試験運転中に墜落したコロボックルとそれを拾った少年の話。作者があとがきで当初完結編の予定で書いたと語っており、人間とコロボックルの間に新しい繋がりが生まれつつある感じでこのまま次代に広がっていくんだろうなーと思わせる内容。ここで終わってても打ち切り的な終わりではなく、拡張していく未来を予感させる良い締めくくりになったと思わせる。

コロボックル世界の科学の発達がやたら速くてビビる。もう空飛んでるのかよ。せいたかさんとおチビ先生が結婚して子供が生まれているけどまだ幼児、つまりそんな時は流れていないのに文明が人間で言えば5世紀分ぐらい発展している。

おチャメさん、幼児なのにコロボックルを既に認識していたり機転がやたら効いたりと、末恐ろしい存在だ。赤子の時からコロボックルに慣れ親しんでいるとあの高速トークもナチュラルに聞き取れるようになるんだろうか。

■夢枕獏「こころほし てんとう虫」/集英社文庫

「こころほし てんとう虫」「天竺風鈴草」「年末ほろ酔い探偵団」「二輪草の谷」「直径7センチのUFO」「風太郎の絵」「ほのかな夜の幻想譚」、以上7編収録。

「風太郎の絵」が印象に残った。初期作品でスルッと落ちないラストってのは夢枕獏としては珍しいんじゃないのかな。雰囲気も良好で余韻もあるが、自分がこの作者に求めている分かりやすさに欠けてて、読後戸惑った。後年はこの手の雰囲気で引っ張る作品もあるが、初期の短編でもあったのね。

それとは対象的に、「二輪草の谷」「ほのかな夜の幻想譚」はベッタベタでとても分かりやすく、あー夢枕獏読んでるなーという気持ちにさせる内容であった。

カラーが本格的に定まっていない時分の夢枕獏作品でもあった。螺旋やバイオレンス以前の時代。それでも山とか陰陽師っぽさの片鱗はあちこちに感じ取れる。

■トーベ・ヤンソン「ムーミン谷の十一月」/講談社



スナフキン、ミムラ、ヘムレン、ホムサ、スクルッタ、フィリフヨンカがムーミン一家を訪問するも不在、連中の帰りを待ちつつ疑似家族めいた生活を始める話。知らないキャラも混じっているが気にしない。このシリーズではいつものコトだ。差も当然のようにいたりいなかったりする。

いつもに増して寂静が甚だしい。11月、冬という季節がそれを演出しているのもあるし、あのムーミン一家がいないまま話が進むというのも大きい。事実上の最終巻で主人公連中がいないってのは凄い。

今回集まった連中はムーミン一家のそれぞれに理想を見出している。ムーミンママはこういう人物像だがこの人はそれに届いていないだの色々と不満を抱えながら擬似家族状態になっている。が、最終的には違っているのは当然として受け入れ、それでもムーミン一家とは異なる形で理解し合い、それぞれの問題/蟠りを解消するラストになる。

『ムーミンシリーズを長らく書いてきた。この一家は理想に映ったかも知れない。でも、君らも理解し合えばこうなれるよ』。作者からのそんなメッセージを勝手に受信させていただいた。

そもそもムーミン一家不在は何だったのか。ラスト、船で帰ってくるし、前巻「ムーミンパパ海へいく」と同じ期間の話になるのかな。前巻、ムーミン一家が孤島でギクシャクした状態に突入していたし、理想の家族っぽくてもちょっとしたコトで不穏な関係になるよ的な話だったのやも知れぬ。そう考えると、前作今作は対を成しているとも見れる。

■夢枕獏「キラキラ星のジッタ」/集英社文庫

「キラキラ星のジッタ」「そして夢雪蝶は光のなか」「妖精をつかまえた」「夢蜉蝣」、以上4編収録。

「妖精をつかまえた」が良かった。終わってみればシンプルなタイムトラベルものであったが、導入の幻想的な感じが宜しい。「月に呼ばれて海より如来たる」みたいな何が起こるか分からない手探り感が好みであった。

「夢蜉蝣」は毛色がやや異なり、この箱に入っているからついついファンタジーな路線で読んでいたが、ホラー風味強めであった。

初期故か密度があってそこも新鮮であった。言葉をポンポン置いていく「餓狼伝」みたいなものも読んでて疾走出来て好きだが、こういう夢枕獏の「普通の小説」もアリであったよ。

■笹沢左保「木枯し紋次郎 (九)」/光文社文庫



「鴉が三羽の身代金」「四つの峠に日が沈む」「三途の川は独りで渡れ」「鬼が一匹関わった」、以上4編収録。

どれも面白かった。何故だ。二期はハズレ多めの記憶があり、8巻再読した時は実際そう感じたんだが、今回は翻って全部面白い。心的ハードル下げてたのかなあ。

僅かな登場人物でグルグル変わる血縁/因縁とか非常に好み。機械のような紋次郎の性格も相まって、情(ニアリーイコール恫喝)でハイハイな展開のみにもならないし。短編でポンポンこんな質の作品が読めるシリーズはそうそう無い。

作者が時代背景を徹底的に専門的に調べて描いているという解説を読み納得。風俗はついつい流し読みしがちであるが、それでも丹念さによって読んでて気持ちがその時代に飛ぶからなあ。汚らしい格好とか寂れた田園やら脳裏に浮かんで読んでいる。いつしか渡世人の時代に飛ばされている。

■夢枕獏「猫弾きのオルオラネ」/ハヤカワ文庫

「ねこひきのオルオラネ」「そして夢雪蝶は光のなか」「天竺風鈴草」「こころほし てんとう虫」「年末ほろ酔い探偵団1」「年末ほろ酔い探偵団2」「ばく」、以上7編からなる連作短編集。

架空の植物・生き物の特性を解体する話も多く、これは陰陽師。陰陽師と違ってファンタジーな装飾で作り上げられているが、読んでて印象はどうしても重なるかな。闇狩り師でもそう思ったし、夢枕獏のストーリーテリングの基礎なんだろう。

音楽の描写がやたら多く、作者の作品の中では珍しいかもと思った。いや、陰陽師でも音楽扱っていたな。山とかカメラとかも相変わらず出てくるよ。

「そして夢雪蝶は光のなか」が150ページほどある中編。他の作品があっさり終わるのに対して、程良いボリュームで読み応え十分な一編であった。作者当人は気恥ずかしがっているが、真っ当な青春物してて良い。自身の過去を引き出しにして書いたから恥ずかしいんだろうか。

■ヒュー・ロフティング「ドリトル先生と秘密の湖」(上・下)/岩波少年文庫



大亀ドロンコに会いに再び湖へ。上巻はその旅の様子を描き、下巻はドロンコによる回想として大洪水前後の地球の様子が語られる。これまでも犬やらネズミやらの語りはあったが、水陸両用のカメ視点は新鮮。舞台も過去だし、やりたい放題している。

ノアが結構ディスられてるのに笑った。カメの行動を是としなきゃならない話の都合とは言え、児童書でこんな有名人をここまでディスっていいのかと笑った。

最後、ちゃんと奥さんが戻ってきて良かった。カメ時間と人間時間の差を意識させるのも幼年期に受けるには良いと思う。

■夢枕獏・編「岩村賢治詩集 蒼黒いけもの」/ソノラマ文庫

キマイラシリーズの作中人物・岩村の詩集という形の一冊。

これはどうでもいい感じの一冊に終わる。キマイラシリーズ未読だし、きっと読んでたとしても響かないんではないかのう。詩という表現媒体自体そんな好みではない。詩はなあ、深読みして過大評価してくれ感しか感じないのよ。

いやまあこれまで生きてて一切累積が無い、何も出来ない人間でもどうにかそれっぽく自己表現出来るものが詩、と考えれば最後の足掻き的な情念も感じられるやも知れぬ。この岩村という人物はそういうキャラなんだろうか、とか考えたりはした。

ネットで作家(夢枕獏)で検索してカートにぶち込んだ結果手元に届いたワケで、書店で本を買わず通販に頼る場合の弊害の一つであると痛感した。それだけさ。

■夢枕獏「餓狼伝 9」/双葉文庫



梅川は馬乗り戦術を取るが、これはガルシーア一門から習った模様。ホセ・ラモス・ガルシーアという、この技術の頂点になる男も登場。作中では象山にも気に入らないと言われる悪役ポジションになっている。まあ、効率を極めてて面白くない闘い方になっちゃうからね。ちょっとびっくりしたのは、作者、モデルにしているであろうグレイシーと交流があるのをあとがきで記述している点。小説内でこんな扱いしちゃうんだと驚く。

北辰館と東洋プロレスの共催によるトーナメントも開始。今回は前半である東洋プロレス分の3試合、梅川VS風間、葵文吾VS立脇如水、そしてその勝者同士の闘いが描かれている。立脇が掘り下げられてて興味深く読めた。ストイックで不器用で、今日日珍しい程にクラシックな造形で宜しい。

梅川の暴走、まあ所詮は馬乗り戦術の中ボスポジションだから仕方ないか。番外編からの再登場でよくここまで活躍出来たと褒めるべき。いや、これは褒めるべきなんだろうか。かつてのスタンスを変えてまで勝ちを目指すキャラ変更がなされたという意味では微妙な再登場だったのかも知れないと思えもする。

■笹沢左保「木枯し紋次郎 (八)」/光文社文庫



「念仏は五度まで」「命は一度捨てるもの」「狐火を六つ数えた」「砕けた波に影一つ」、以上4編収録。

大昔に読んだ時は二期作品は微妙という印象であった。で、今回もちょいと微妙かなーと、同じ感想を持っている。紋次郎のキャラ人気に依存した感じで、これまで程話一つ一つが練られていない感じ。

「狐火を六つ数えた」、意外と義憤に近い行動原理を見せて、ちょっと紋次郎らしくない気もした。以前の紋次郎ならもっとこうそこまで酷い世の中を見てもスルーしていたんじゃないかなあ。結構ストーリーへの絡め方に作者も苦戦していると感じる。

「砕けた波に影一つ」、閉鎖空間かつ船上というコトで、新鮮な気持ちで読めた。シリーズも長く続くと読んでて変化球を求めるようになるのう。

Page Top

プロフィール

七瀬

Author:七瀬
This ain't a song for Kyo Fujibayashi
(これは藤林杏の為の歌じゃない)
No silent prayer for the faith-departed
(失った信頼の為に黙祷するやつはいない)
Ketta ain't gonna be just a t-shirt man flatter to the masses
(あの生き物はマス受けするTシャツ男になるつもりはない)
You're gonna hear ketta voice
(お前は狂人の雄叫びを聞くだろう)
When Ketta shout it out loud
(キョロ充のイエスマンが大声でそれを叫ぶ時)

Clannad is life
(クラナドは人生)

談合時のチャット部屋

連絡先:
onthelindenあっとまーくyahoo.co.jp

最近の記事
カテゴリ
FC2カウンター
Xbox360

フレンド常時募集中。
気軽にどうぞ。
月別アーカイブ
リンク

このブログをリンクに追加する

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ

ACR